2014年07月04日

2014年観劇上半期記録

1月12日「夜更かしの女たち」
直人と倉持の会 サンケイホールブリーゼ

 ある高校の美術教師ハザマ(竹中直人)が退職することからお別れパーティーが行われていた。が、実のところこのことをダシにして集まっただけで、事実上は元生徒達の同窓会となっており、その空気にいたたまれなくなった教師は会場を抜け出し駅の待合室で帰りの電車を待っている。その時到着した電車から元生徒で有名芸能人になっていたトワコ(中越典子)が降りてくる。さらに幹事役の元生徒モトコ(篠原ともえ)達が加わったことで彼女たちの男子同級生が自殺した話が浮かび上がってくる。そこに偶然降りてきた女性作家アヤコ(風吹ジュン)が彼女たちの話を聞いていく内に一つの仮説を立てるのだが…というお話でした。

 このお芝居は前半一時間の休憩20分、後半一時間の構成なのですが、前半は駅の待合室での様子を演じ、休憩の間にセットチェンジ。後半は舞台をその駅の裏のバスロータリーに移し、一から芝居をやり直し、実は裏ではこのような会話が行われていたのです、という前半では解らなかった部分を埋めていく構成になっていました。まーこのセットが凄い!実際に電車が動くんだから!よく20分でセットを変えられるものだと感心。

 物語としては個人的には好きな部類に入るとは思うのですが、物足りなかった感が強し。ネタばれですが、女性作家の風吹ジュンさんが立てる仮説は自殺した同級生は事故死なのでは?という物。しかしそこに行き着くまでの事前のネタ振りが弱い。細かく言えば弱いというよりも、最後の最後に推理物になるとは予想が付かないのでネタ振りが印象に残っていないがために解決(?)したことへの爽快感が薄い(風吹ジュンさんが女性作家と解るのが後半部分でそれまでは謎のおばさん。解決の導き手と気がつきにくい)。僕が鈍いと言われればそうかもしれないけど、キャラクターの全体像を観客に把握させるのは早めの方がベターだと思う。このようなタイプのお芝居は料金も高くお客さんも一回勝負がほとんど。だからなおさら。

1月19日「よぶ」
STAND FLOWER 應典院

 凄かった!の一言なんだけどあの人の心を締め付ける演技と叫びはなんだろうね。お芝居で泣く事はよくあるけど、今回の泣きはその心を締め付けることで搾られて出た涙のような気がします。

 なかなかプロとして食っていけないカメラマンの青年が背水の陣といきこんで大学時代の先輩後輩を連れて撮影旅行に出かける。しかしその先輩の彼女が崖から転落、事故死してしまう。彼女をそこまで連れていった事、そして事故後の対応について仲間達から責任を問われる青年。「何も悪い事をしている訳ではないのに、苦しむことになる」旧約聖書の「ヨブ記」を元にしたお話でした。

 後半不安だったのはこの展開で上手く締められるかどうかでしたが、主役の立花祐介さんのほぼ一人芝居による独白になった事が良かった。これで他キャラクターを最後は悪者にせず、世の中の無情を訴えた事に好感を持ったし、邪魔がいないスリリングな芝居で見ている僕らが集中、ひたすら集中。一人芝居をやり切った立花裕介さんも凄いけど、そこに行くまでには皆さんの熱演があったからこそ。しかしこのお芝居は本当にやるのにストレスがかかったと思う。それこそ心臓を大事に…。

2月8日「月雪の娘」
ムーンビームマシン ABCホール

 雪女の呪いによって盲目となってしまいさまよう剣士と、雪女と人間との間に生まれた少女が出会ってしまう。やがて不老不死の効果がある雪女の血が原因で遊女が亡くなるという事件が起こる。その騒動はやがて剣士の妹にも影響がおよび…というお話でした。

 江戸時代の文化を今の感覚で新解釈する世界観はPCエンジンの「天外魔境」シリーズのようで、僕にとってはちょっと懐かしい感じ。前に見に行った「ドロテアノヒツギ」よりも「世界観は」好きかも。

 残念ながら色んなキャラクターに背景を持たせてしまったために、一番大事にしないといけない主人公チームの背景、そしてそこから生まれるドラマが希薄になってしまった。それと音響に厳しいABCホールを使いこなせなかった感じも。俳優さんの声が音楽に消されてしまった所が何度かあり残念。たらればは禁物だがHEPHALLだったら…。

2月9日「ウチの親父が最強」
梅棒 HEPHALL

 ダンスユニット梅棒による東京に引き続いての大阪公演。前説以外はセリフ無し、音楽に合わせたダンスでストーリーを進めていく構成。

 青年時代の「ウチの親父」が嫁に出会い。→嫁の父親の許しを貰い結婚、兄と妹の双子を出産する。→しかし家が火事になり一家は貧乏に。→クリスマスプレゼントも買えない状況に偶然拾った犬を妹にプレゼント。→やがて妹は成長。痴漢に会ったときに助けてくれた青年とボーイミーツガール。→親父がヤクザ一味絡まれる。ヤクザが応援に呼んだのは妹が恋した青年だった。→犬を拉致したヤクザ一味はさらに罠をかける。ヤクザの嫁と媚薬(?)を使って親父を誘惑。現場を見た嫁が家 出。→親父落ち込む。→青年、ヤクザ一味と止めようと頑張る。犬を逃がすことに成功→やがてヤクザ一味と親父の一家が全面対決。ヤクザ一味が優勢だったが、犬、そして嫁が帰ってきて形勢逆転。→お互い和解。そして青年と妹が結婚し、出産、ハッピーエンド。というストーリーでした(兄サイドの受験失敗→落ちているエロ本にはまる。→最後には受験成功というサイドストーリーもあり)。

 いやー楽しかったなぁ。ジャズダンスやポールダンスといった芸が途切れなく続くので圧巻されっぱなし。それに笑いあり、泣きありとなるとケチ付けるところが何もないんだよなぁ。お芝居の評論において「他所がこうだったから」というのは無意味だし、多分しないと思いますが、でも「楽しさ」という点でこの公演を今年一年の基準点にしてしまうかもしれない、そのくらいのインパクトのある作品でした。

2月23日「第22回記念公演『ThE 2VS2』」
ThE 2VS2 インディペンデントシアター1st

 コントチーム「ThE 2VS2」による記念公演。7本あるショートコントの内「校門で待っている」「落語-69(ろっきゅう)さん-」「矛盾(ほこたて)」「交換日記」の4本が面白かった。全体的に下ネタ度は高めだったけど、しつこ過ぎない程よい塩梅だったのが良かった(69さんは濃厚でしたがw、それでも落語という芸として成立しているからアリ)。

3月1日「アッシュメロディ」
満月動物園 シアトリカル應典院

 「ちぐはぐ」。元々ファンタジー色の強いシュールな劇団さんではあるし、今作もそうであったんですが、新加入の西原希蓉美さんを使ってシュールさゆえの舞台と観客席との遠い距離感を詰め直そうとしたのがかえって「あだ」になってしまった気がするのです。遠くの方でチームとしての芝居があって、近くで西原さんの一人芝居を見たような気分。これらが一直線に繋がっていれば良かったんだけど、どこかバラバラにやっている感じが抜けず、どこにピントを合わせたらいいのか、最後までよく解らなかった。

 それだけ西原さんの存在感が素晴らしく、彼女の技量を楽しむという事も出来たけど、正直最初の一時間が限度。それに彼女が物語を締める役割なら「終わりよければ全てよし」に成り得たかもしれないが、ラスト前で退場。舞台をコントロールしていた人間に何故やらせないのか疑問(つかみは彼女の歌だったのでなおさら)。主役は観客が物語を追う道しるべだと思うのだが、何故排除してしまうのだろう。

3月2日「ミュージカルだヨ!?青春探偵」
たかつかまさひこのミステリー劇場 神戸アートビレッジセンター

 ほぼ一年に一度、神戸で行われる「青春探偵シリーズ」の第三弾。いい大人なのに青春青春と叫んでいる、若い女の子に目がない、そして人の心をのぞき見る特殊能力を持った西条青春(あおはる)探偵とその仲間達の物語。タイトルにはミュージカル、と出ているが「プリンセスプリンセスをフューチャーした音楽劇」と言った方が解りやすいと思う。プリプリをリアルタイムに体験した世代には懐かしい物があったのでは。

 いやー、おもろ楽しかった!これだけの関西演劇界の役者を揃えて、満席。それを神戸で出来たというのが嬉しい。物語の締め方としては「声の大きさ」と「歌」の力技で押し切った所は正直あった。だけどそれもひとつの立派な「芸」。きちんと客席に伝える事が出来たんだから不満は全然ないんだよなぁ。これがたった二回だけの公演というのが実に勿体無い。

3月15日「B&B」
JACKPOT 芸術創造館

 B&Bは「ベッド&ブレックファスト」の略。英語圏での宿泊施設の事であり、バックパッカー向けのゲストハウスと民宿の間くらいの施設らしい。

 舞台となるB&Bには不倫の関係のため妻から逃げている男女、対人恐怖症の弁護士、何故か物置部屋に住んでいる女性といった一癖ある住民ばかりが住んでいた。そこに長期のハワイ旅行を切り上げた女性が帰って来た。住民達と一悶着あった後、彼女は自分がこの家の持ち主であると告げる。実は留守をまかした女友達が家を勝手にB&Bとして運営していたのだ。そこで女主人は住民達を追い出しにかかろうとするのだが、彼らに別に事件が起きてくる…というお話でした。

 おそらく序盤の帰ってきた女主人と住民達の一悶着で笑いを取ろうとしたのでしょうが、彼らのバックボーンを知らされないまま話を進めてしまったが為に「異常な環境下に放り込まれた真面目な女主人」という面白さが成立できなかった。実は「別の事件」という切り返し方が面白く、後半からの引きこもりがちな住民が救われていく展開が良かったのですが、前半で笑いが取れなかった事が最後まで影響。起承転結の「起」がいかに大事かを実感。ちょっと勿体なかった。

3月16日「Jack Moment」
バンタムクラスステージ 萬劇場

 以前ブログで紹介しましたがちょっと追記を。
http://kconasu.otaden.jp/e310815.html

 この作品での主人公はジャック(信國輝彦)とフロッグ(土屋兼久)の二人という事になるんでしょうが、後になって思い返してみるとジャックは物語の導き手として、フロッグは物語の語り部として存在しているだけかのようで、自己主張も乏しくまるで透明人間のようでした(大阪版では彼らにもう少し人間味がありました)。こういったキャラは見ている側として乗れない、感情移入しにくい危険性があるのに、やりきったのは彼ら二人の力量と演出の凄さだと思った事を追加しておきます。

3月26日「男の60分 2014」
ゲキバカ 世界館

 面白かった!今回の公演はもちろん演劇ではあるんだけど、所属の伊藤今人さんが主宰しているストーリー性を持ったダンスユニット「梅棒」に近い世界感。物語も母親が亡くなったことで帰省した男が小学生時代の仲間達を思い出す、という感じで決して大きな物ではないんだけど、友達が貧乏、在日、障害であったことに気が付き、無邪気では居られなくなるほろ苦さがスパイスとして効いてたのはゲキバカとしての味付けの上手さか。ダンス、劇団としてのお約束、鍛え抜かれたボディを見せる事でお客さんを期待するものをきちんと提供し、決して飽きさせない作りになっていたのは流石!

4月5日「MISIN いつものお花のカーディガン」
苺町 トリイホール

 作・演出の大牧ぽるんさんがやっていた劇団しろっとそん(確か今休止中だったかな?)を見る機会がなかったので今回が初めてのぽるんワールド。面白かった!元々、少女漫画的な世界かな、と予想はしていていたんだけど、「かぼちゃワイン」のような男でも見られる少女漫画アニメ的な世界感で安心。アフタートークの受け売りじゃないけどオッサンの中の乙女心をくすぐるのがうまいw(お客さんも意外なほど男性が多かった)。

 前半コメディで後半本題に移る構成のうまさも堪能。その前半でもう少し「ツッコミ」を増やしてお客さんとの会話を増やしたらよかったかな?というのはあるけどダンスや前座の歌といった芸もしっかりしていたため、ショーとして十二分に楽しめた。1時間という短編であることとトリイホールという小屋の小ささも味方したと思う。ただそれは2時間の長編でもっと大きな小屋でもできるのか?という期待半分、いじわる半分の気持ちも。それを確かめるためにもまた見たいチームでした。

 本公演はこの作品と「あの日のチェックのロングスカート」という作品による二部構成だったんですが、「いつもの~」が良かっただけに「あの日の~」が見られなかったのが残念。

4月19日「リターン☆プラネット on stage」
baghdad cafe’ インディペンデントシアター2nd

 お菓子メーカーの社長が作った時代劇専門のスタジオ。しかしその社長も亡くなり、時代も移り変わったことでスタジオが閉鎖される事が決まる。映画主演が決まっていた☆子(すたこ)はあきらめきれずに周囲を説得。一ヶ月の猶予も得られたことから製作継続が決定する。そんな時、故郷の妹から母親が倒れたとの連絡が届く。☆子に思いを寄せていた男性へ断る方便なのか「故郷の星に帰る。」と言い出す☆子。ここから彼女が故郷の星へ帰省する奇想天外な第二部が始まる。

 凄い舞台を見た!普段は隠すインディペンデントシアター2ndの舞台奥や、脇の収納スペースもあえてむき出しにし、素のスタジオからスタート。物語が進むに連れてセットが組み立てられた…と思ったら第二部に入り一度リセット。現実と物語、そして物語の中の物語が交錯する不思議だけど楽しい舞台でした。フェリーニの映画「8 1/2」が好きな人にはオススメ。ここまで手の込んだ作品になるとお話が破綻して舞台の上で空回りする危険性があるんだけど、それがなく飽きさせない作りになったのは流石だなぁ。

4月20日「ほらふき王女バートリー」
ミジンコターボ HEPHALL

 ほらふき癖がある王女が戦争状態にある隣国の王子と政略結婚させられそうになる。それを嫌がる王女が発した嘘「泥棒さんに恋をした」が誠になってしまい、城に忍び込んだ泥棒に王女はついて行ってしまう。それと同時に大臣が戦争状態を止めるためにクーデターを企てる…というお話でした。

 おとぎ話的な世界観にダンス。これだけで楽しくなりそうな予感ありありだったのですが…、正直物足りなかった。王女と亡くなってしまった彼女の母親との関係が物語の主軸だったのに、魔法のランプをめぐる隣国との戦争とそれに疲弊する兵士達という政治色が出てしまった。前者がファンタジー色の強い「家族の話」だとすると後者はリアルな「家族の話」。こうなるとどうしてもリアルの方に吸い取られて主軸の存在感が薄くなってしまうと思う。多少無理矢理な物語でも力業で納得させるだけの役者さんとダンサーを揃えていただけに余計に残念。大人を意識せず子供寄りにしてもっとお祭り感を高めても良かったんじゃないだろうか?

4月26日「夏の盛りの蝉のように」
文学座 ピッコロシアター

 父親である葛飾北斎の影響から少女時代に浮世絵師を志し、北斎が亡くなると歴史から姿を消してしまうお栄(葛飾応為)の物語。それを彩るのは彼ら二人の元を時折訪れてくる歌川国芳、渡辺崋山。そして狂言回しとして北斎の弟子である蹄斎北馬(ていさいほくば)。

 彼らの交流があったかどうかは実際の所不明だが、歴史のifとして作られ、そして大いに楽しめた。北斎とお栄の物語は故・杉浦日向子さんの漫画「百日紅(さるすべり)」でも有名だが、この作品が好きな人には絶対にオススメ出来る。劇場には先生に引率された高校生らしい子供達が来ていたのだが、最近になってようやく評価が始まったお栄とはいえ、まだまだマイナーな彼女の話が分かるのか不安であったが笑い、笑いでかなり受け入れられていた。もちろん背景的な物を知っていればより面白く感じられたと思うのだが、そんな物無くても十分勝負出来た、という事。

4月27日「結婚しようよ」
The Stone Ageヘンドリックス トリイホール

 大衆食堂を営む夫婦から生まれた三姉妹。次女の結婚式をひかえ三人が実家の食堂に帰ってくるのだが、その次女がマリッジブルーで失踪。皆で彼女を捜しながら三姉妹それぞれが抱える結婚の悩みを描いた作品。

 毎度の事ながらここの劇団さんは安心して笑えて、安心して泣かせてくれる。どの作品でも中井正樹さんと本木香吏さんのキャラクターが同じというスターシステム(手塚作品のヒゲオヤジのように複数の作品に共通して出てくる事)を組んでいながら、毎回違う感動を与えてくれる事に凄いと言わざるを得ない。

 そのスターシステムの一つとして一明一人さんがオカマキャラ(もしくは「ぽい」)を演じる事が多いのだが、今作ではいつもと違い気弱な青年という新鮮(?)な役どころで、これを見られたのも嬉しかった。

5月3日「五月花形歌舞伎【昼の部】」
明治座

 市川染五郎さんが座長的立場の公演。
○義経千本桜(鳥居前)
 名シーンだけを見せる演目。歌舞伎の様式美とアクロバティックな面を堪能。
○釣女
 狂言をベースにしたお話。大名が美しい女を釣り上げて妻としたのを見て、お付きの太郎冠者は同じようにしてみるが醜女を釣り上げてしまう、という物。コメディとして、踊りとして楽しめた。
○邯鄲枕物語(かんたんまくらものがたり)
 お金に苦労している夫婦が茶屋を営むことを決心し引っ越ししてくる。そこに訪れた武士に妻を使って誘惑させ、それに乗った彼を脅迫する。慌てて逃げる武士だが大事な七福神の掛け軸が入った箱を忘れてしまう。夫はその箱を枕に寝てしまい、その夢の中でお金持ちになる事が出来た。しかしそこではお金の価値観が逆転しており買い物をしてもお金を受け取ってくれない。さらに大変な数のお金を使い切らないといけない状況に追い込まれ…というお話。伝統芸能の歌舞伎、というよりは普通に舞台として面白かった。

5月3日「オレンジ新撰組リターンズ」
6番シード シアターKASSAI

 元々1時間の短編として以前上演した物を長編として仕立て直した作品。ある農村でモテない男達がモテるために京で評判の新撰組になりきるために、たまたまあった南蛮渡来のオレンジを用いてオレンジ色の羽織を作成。オレンジ新撰組と名乗る。新撰組を名乗ったことでモテるようにはなるが、本物の新撰組に恨みのある攘夷派の連中に狙われる副作用が出てしまう。仲間を拉致されたことで本当に戦いに挑まなければならなくなったオレンジ新撰組の運命は…というお話でした。

 ちっぽけなニセ新撰組の物語でありながら大きく踊り、大きく殺陣をする舞台と世界観の大きさに驚くばかり。シアターKASSAIさんには申し訳ないが、こんな小さな劇場でやるのが勿体ない!と思ったほど。ただ実際に大きな舞台でこのスケールを維持した物を作ろうとしたら予算がいくらあっても足りないかも(苦笑)。結局元に戻ってKASSAIさんで正解。その点で目茶苦茶コストパフォーマンスがお得なお芝居だったと言える。

5月4日「美輪明宏版 愛の賛歌」
新国立劇場

 美輪明宏さん演じるエディット・ピアフとYOUさん演じる彼女の妹シモーヌ・ベルトーを中心にした舞台(ちなみにシモーヌは実の妹ではなく、「自称」だったそうです。劇中ではその説明が蛇足となるのを避けるためか妹で押し通したようです)。

 行ってみて驚いたのが第1幕80分、第2幕50分、第3幕60分の合計約3時間の舞台であったこと。これは最後まで飽きずに見られるかな?と不安だったのですが、大きな劇場でお金と経験をかけた舞台装置は違いますね。さらに要所要所で入ってくる美輪さんのシャンソンが舞台をグッと引き締める。特に第2幕の終わりでのタイトルにもある「愛の賛歌」は圧巻。

 ただ第1幕・第2幕が凄かっただけに最晩年のピアフと彼女の最後の夫となったテオ・サラボの話になる第3幕がオマケにしか感じなかったのは残念。ここはピアフは歌わず、テオがどちらかというと主役の話になり、テオ役の役者さんが美輪さんに代わって舞台をコントロールしないといけないと思うのだがまだ力不足の感あり。

5月10日「ゴーストシティ」
SPIC×青年団リンクRoMT エル・パーク仙台

 ハーフマラソン大会に参加するために仙台に行った時に、偶然やっていた公演。SPICとは「せんだい舞台芸術復興支援センター」の略で平田オリザさんの青年団の劇団内ユニットRoMTとの提携公演ということらしい。仙台を拠点にしている俳優さんが半分弱参加したそうだ。

 ギャリー・オーウェンという人が書いた作品の翻訳物でイギリス・ウェールズを舞台にした都会にある25の風景を続けて見せていく作品。映画「マグノリア」に似ている所もあるんだけど、それぞれの話に関連性はないし、最後に総括するようなオチがある訳でもない。何処にでもある街の中にある「語り」を追求した舞台。

 舞台を三方から取り囲む客席の作りがそれぞれ凹の形になっていて、そのへこんだところに役者が使う椅子を配置した事で役者は観客を、観客は役者を嫌が上でも意識せざるを得ない作りが緊張感を生んで面白かった。「語り」というのは役者と観客との会話という意味ととっていいかもしれない。演じる側と見る側の真剣勝負感が強いのは評価ポイント。

 ウェールズという日本人には馴染みのない場所で、日常にありがちな、決して劇的とは言いづらい物語は本来であれば退屈になってしまうはずなのに、舞台に緊張感を持たせることでそうさせない演出は流石。プロジェクターでカウントダウンするように25の物語のタイトルを映し出すのも「何時終わるのかゴールを見せる」点で効果的だったと思う。

 声にエフェクトをかける演出があるためか舞台用のインカムを付けていたんだけど、そこが舞台ならではのライブ感を損ねている感じがしたのが残念。やろうと思えば生の声で勝負出来たと思うんだけどなぁ。

 役者さんで印象に残ったのは一人で何役もやっていたので間違っているかもしれないのですが、おそらく菊池佳南さんという女優さん。ツッコミというか舞台と観客の橋渡しが出来る能力がある。

5月31日「Copyright.」
アリスインプロジェクト(月組) シアターKASSAI

 アイドル達を集めた演劇ユニット。毎回いろんな劇団さんから演出家・脚本家を招聘して公演を打つスタイル…らしい(アイドルにまったく詳しくない)。今回はバンタムクラスステージの細川博司さんによる作・演出。

 地球外生命体へのメッセージとして取り付けたパイオニア10号・11号の金属板に対する返事が送られてくる。彼らの返事は「コンタクトする者は『人類の叡智』を示せ」そして「それは2020年である」ということ。各国が議論した結果「人類の叡智」を示す物は「聖書」。しかし聖書の製作者も著作権もないようなもの。この状況下で戦争という形で決着を付けるわけには行かない。そこで考え出されたのはそれぞれの国から代理人、それも少女を立てて戦わせるという物だった…というお話。

 「少年ジャンプ」的な世界観で大いに楽しめた。他の人のツイッターでの感想をお借りすると「考えるな、感じろ!」。この一歩間違えると中二病と言われかねない格好良さを理屈は置いておいて楽しむべし(なんか「パシフィック・リム」の話をしているようだ)。

 正直ポテンシャルという点では演技経験の少ない人がほとんどだったために(中にはこれは初めてという人も)演技経験が豊富なお姉様達がいるとはいえ、60点くらいしか持っていなかったと思う。しかしそのお姉様達が「上手いプロレスラーはほうきとプロレスが出来る」という例えのように上手く倒し、上手く倒れてくれていた。さらに必要最低限の殺陣に留めたことで(下手な人が殺陣を頑張れば頑張るほど残念な結果になってしまうから!)舞台がチープに感じることが全くなかった。演技経験が少ないという「伸びしろ」が大きいということもあって60点が1.5倍まで引き上げられていたんじゃないだろうか。

6月28日「子供の時間」
スターダス・21カンパニー 阿佐ヶ谷アルシェ

 1934年にアメリカで初演された作品の翻訳劇。後にウィリアム・ワイラー監督、オードリー・ヘプバーン、シャーリー・マクレーン主演によって「噂の二人」として映画化されている。

 旧友であるカレンとマーサは一緒に女子寄宿舎学校を運営していた。女学生の中でわがままで虚言・仮病癖のあるメアリーに手を焼く2人。やがてカレンはメアリーとの親戚であるジョンとの結婚を発表するがマーサが嫉妬を起こしたこと、そして教師をお願いしていたマーサの叔母リリーがこの嫉妬が原因でマーサと一悶着起こしたことを生徒達に聞かれてしまう。

 度重なるトラブルにペナルティーを与えられたメアリーは寄宿舎を脱出。メアリーの祖母でここのスポンサーでもあるアメリア・ティルフォードの元を訪れる。孫かわいさで歓迎するアメリアだが、このままではいけないと判断し寄宿舎に送り返そうとするが、メアリーはこのままでは不味いと思い、マーサが嫉妬した件からカレンとマーサが同性愛の関係であるとねつ造してしまう。これに驚いたアメリアは寄宿舎の活動を止めさせるが、ジョンのメアリーへの尋問によって嘘が発覚する。しかしメアリーは事前に脅迫していた女の子を使い2人の関係を見たと証言させることに成功してしまう。最終的に裁判に持ち込まれるのだがここでもカレンとマーサは負けてしまう。誰も居なくなった寄宿舎で暮らす2人の進む道は…というお話。

 翻訳劇では観客に時代、背景、名前等々を理解・把握させるのに余計に手間がかかりがち。このお芝居でもこの問題にぶち当たっていました。出だしは賑やかな学校の風景となるのですが、その後物語に大きく関わることのないモブキャラが必要以上に前に出てしまい誰が主要キャラなのか見えなくなってしまった。既に出来上がっているホンなのでいじれない事情もあるのでしょうが、ここは見せ方に工夫が必要だったと思います。キャラがつかめてからは物語にグイグイ引き込まれて面白くなってきました。

 ただカレンとマーサが世間から隔離される事になる終盤はどこか停滞感が。「掛け堕ちる」感じが欲しかった。疲弊している様子を出したかったのか声が小さいこともあって舞台が遠く感じた。

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Posted by 天野"kevin"達也 at 22:45│Comments(0)演劇
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