2013年12月09日

バンタムクラスステージ東京公演観劇

 大阪を拠点にしていた劇団「バンタムクラスステージ(以下、バンタム)」さんが東京に拠点を移しての初めての公演、「クロッシングクリスマスクリアランス(以下、クロッシング)」を見に池袋に行って来ました。



 2000年のアメリカ、ボストン。ゲーム企業のCEOとして成功したアルフレッド・ハイネはかつて父が経営していたオモチャ屋を買い戻す。彼の伝記を書くために行動を共にしているクーリッジと彼の息子フィルを連れてかつての倉庫に入ると人形が三体、放置されたままになっていた。自らの、そして父と兄とこの人形たちの思い出を語り出す。やがて舞台は彼の少年時代である1960年代に移ってゆく…。

 オモチャ屋の倉庫でクリスマス・セールの準備をしているユダヤ系のハイネ一家。この倉庫には「なにやら良くない事に使われている」奥の部屋があった。この事を許している父イブラヒム(上杉逸平)を軽蔑し、オモチャ屋を継ぎたいと思っているアル(栞菜)が成長したときに「この部屋」が妨げにならないようにどこかに移転させたい兄レナード(福地教光)は「この部屋」を利用しているアイリッシュ・マフィアのニール(ガラかつとし)の元で働くようになる。簡単な借金取りの仕事から始めたレナードだったが人望があることから次第に頭角を現し出す。やがてイタリアン・マフィアがシカゴからボストンに勢力を広げだしたことで街の闇勢力のバランスが崩れ出し、レナードとアルの運命は大きく動き出す…というお話でした。



 良質のエンターテインメント!最高!バンタムさんはノワール(闇社会)でドライな世界観が売りだと僕は思っているのですが、今作ではアル、及び彼の友達といった無垢なキャラクター、そして三体の人形達との会話というファンタジーが出てきた事でウェットの面が増えた事によりちょっと新しいバンタムを見ることが出来ました。その一方で今作と同時代のシカゴを舞台にした過去作品「ジャックモーメント」の姉妹編とも言える作品にもなっており、この作品に出てきた残忍な「カレンダー」というキャラクターが出てきたりしたので、長年のバンタムファンにも嬉しいポイントがありました。個人的に「押し」のキャラクターはドヰタイジさん(スタージャックス所属)演じるヒューズ。前述の通り今回はファンタジー要素があるので、いつものバンタム作品のような「税金を払い、飯を食らう」実在感のある大人がやや希薄になったのに対し(あくまで主役はアル達ですし)、このヒューズだけ少年時代からのバックボーンをきちんと語ったからなのかな?

 ちょっと「あれ?」と感じたのは脚本の段階では笑いを想定していたと思われるところで、その反応がややウケ、もしくは無かった事。今までのバンタム作品では笑いが起きない作品がほとんどだったので観客側も準備できずに反応できなかった面も否定できないのですが。個人技でそれを持って行っても良かったかもしれませんが、それをすると世界観が崩れる可能性もあるからチームワークでやるしかない。そのチームワークで笑いを生み出すまでの時間がなかったのかな…。ここも出来上がっていればより上の作品になれていたと思うのですが、そこは作品を作りあげる苦労を知らない勝手な希望かな。



 この公演では本編である「クロッシング」と番外編である「クロッシングマナーズ」がありました。この作品は「クロッシング」内ではさらっと終わっていた事が実は大変な事になっていたという物で「語られなかった『クロッシング』」という作品。本編と番外編とのリンクがあまりに見事だったので安易にスピンオフという言葉を使いたくないくらいの出来、だったのですが…。作・演出の細川博司さんによると「タランティーノ作品のようなコメディ」を目指していたそうです。これは「当の本人は大まじめなんだけど、周囲や設定がズレを起こしたことで振り回される」事の面白さを狙った…と思うのですが(ちょっと自信ない)、僕が見た「クロッシングマナーズ」の回は千秋楽だから、ということなのか役者さん達がアドリブをやることで笑いを取っていました。確かに楽しかったのですが、このように個人技に走ると前述の通り作品の世界観を壊してしまうので僕は感心しません。このようなお遊びはあらかじめ告知しておくか、もしくはファンイベント向けにやるべきだと思います。結果的に上手く転んだので良かったとは思うのですが…。

 大阪で共に活動していた、気心知れた役者さんを極力使わず、初めての東京の役者さんを使ってもやれることを証明した一方で色んな課題が見えてきた公演だったと思います。ただこの課題は間違いなく次回公演で今作「クロッシング」と世界観を共有する「ジャックモーメント」で生かされる事でしょう。来年の3月12日から16日までの公演を予定しているそうです。

 そうそう、実は解る人だけには解るお遊びが隠されていたんですが、見た皆さんはお気づきだったでしょうか?ヒントは主人公アル、終盤に出てくるバーニー、そしてクリスマスです(笑)。


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Posted by 天野"kevin"達也 at 23:15│Comments(0)演劇
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