2012年09月04日

ターンAから上流階級の作法を学ぶ

 さて日曜日は大阪ガンダム学会だった訳なのですが、今回は何故か携帯及びWIFIの電波が届かなかったために主催、七井コム斎さんによるユーストリーム配信が出来ませんでした。会場のなんば紅鶴が入っている味園ビルはどういう訳か電波を遮断する構造になっているために、むしろ今まで配信できた方が不思議なくらいなのですが(苦笑)。取り上げたのがG-SELECTIONのDVD-BOXパッケージにもなっていて、ファンの評価も高い第8話「ローラの牛」を含んでいただけに、その議論を見ていただけないのが残念。

 さて第7話「貴婦人修行」にてやむなく女装した主人公ロランが月の女王ディアナに拝謁した際に手に甲にキスをするのですが、これはロランが女性パイロット、ローラ・ローラとして紹介されている以上、女性同士のキスはおかしくないのか?とあるパネラーが疑問を投げかけてくれたのです。上流階級の礼儀やキスの習慣は日本人にはうといため、その時点では明確な答えを誰も持っていなかったのですが、調べてみると確かにおかしい事が解ってきました。



 参考資料として手っ取り早かったのがオードリー・ヘップバーン、グレゴリー・ペック主演の「ローマの休日」。この作品の冒頭でアン王女(ヘップバーン)の歓迎パーティーが行われていて、各国からの要人に挨拶するシーンがあるのですが、ここで要人達は(時代的に男性)全員ではない物のアン王女の手の甲にキスをするのに対して、お連れの奥さんは握手だけで終わっているんです。Googleで調べてみてもヨーロッパの社交界の儀礼に関する情報が乏しくて完全に断定することは出来ませんが、こういう場での同性間でのキスはちょっとありえない話のようです。

英語版ウィキペディアの「Hand-kissing」へのリンク



 これがいい加減な知識を元に描いていたのなら「良くわからんと書いたんだなー。」で済むのですが、そこは富野さんですからね!実は手の甲へのキスは「唇を触れるのではなく、した振り」をしないといけないそうです(確かに沢山の人に「ブチュー」とされればした方もされる方も衛生的に良くないです)。ロランのキスもよく見ると唇が手に触れないよう「寸止め」しているために、富野さんはきちんとした知識を持った上で「あえて」このシーンを描いているわけです。つまりディアナはロランに対して
「お前男やんけ(失笑)!」
と見切った上で手を出している訳ですな。それに対して自分が「女性」である事を忘れたロランはうっかりキスをしてしまうのです。
ロラン君残念!「貴婦人修行」した
意味ゼロ(笑)!


 ちなみにロラン=ローラということがバレバレなのは次々回の第9話「コレン、ガンダムと叫ぶ」でロランが会う人すべてが「お前ローラやろ!知ってるで(苦笑)!」と解っている前提で接しています。きちんとしたセリフとしては発していませんが演技の中にそういった行間を上手く隠しているのはさすが富野さんなのです。

 ちなみに余談ですがキスについて調べていると19世紀のオーストリアの劇作家、フランツ・グリルパルツァーが書いた「接吻」という詩が面白かったので紹介。

手の上なら尊敬のキス。
額の上なら友情のキス。
頬の上なら厚情のキス。
唇の上なら愛情のキス。
閉じた目の上なら憧憬のキス。
掌の上なら懇願のキス。
腕と首なら欲望のキス。

さてそのほかは、みな狂気の沙汰。

 「そのほか」ってドコなんだよ!という話なんですが(笑)、「尊敬のキス」というのは元ムーンレィスのロランにとってアクシデント的ではありましたがディアナに対しての当然の行為だったんでしょうね。ところで社交界では「尊敬のキス」でもこれがローマ・カトリックやマフィア(映画「ゴッドファーザー」シリーズ)の世界になると「服従のキス」の意味にもなるのがおもしろい。この場合だと同性間でもOKなんだとか(聖職者やマフィアのボスという位置から女性同士というのは考えにくいですが)。最終回でロランが年老いた(?)ディアナの隠遁生活に「付き従う」事を考えるとこの時のロランのキスは後の行動の暗示ともとれなくもない…いや、これは考え過ぎかな(笑)。

 まぁこういう事を「大阪ガンダム学会」では毎回話し合っている訳です。次回は10月7日、なんば白鯨での開催を予定しています。

  

Posted by 天野"kevin"達也 at 10:15Comments(0)ターンA